第76回の合格発表予定日は令和8年11月27日(金)で、試験日から115日あります。今年から変わったのは通知の中身で、国税審議会は8月21日付で、合格者と一部科目合格者にも各受験科目の得点を通知すると公表しました。全受験者が自分の点数を知る初めての回になります。
簿財の合格率は年によって4倍動く
| 年度(回) | 簿記論 受験者数 | 簿記論 合格率 | 財務諸表論 受験者数 | 財務諸表論 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年度(第73回) | — | 17.4% | — | 28.1% |
| 令和6年度(第74回) | 17,711名 | 17.4% | 13,665名 | 8.0% |
| 令和7年度(第75回) | 18,466名 | 11.1% | 15,629名 | 31.9% |
表の3年分を見ると、簿財の合格率は年によって大きく振れます。財務諸表論は令和6年度の8.0%から令和7年度の31.9%へ、4倍に動きました。簿記論は逆に17.4%から11.1%へ下がっています。同じ試験の同じ科目で、受験者数はほとんど変わっていません。
自分の出来だけで結果を予想しても当たりません。合否は科目ごとに決まりますが、実際の合格率がここまで動く以上、その年の答案の分布が結果を左右しています。手応えが良かった年が低い合格率の回だったり、逆に手応えの薄い年が高い合格率の回だったりする。試験直後の自己評価は、この振れ幅の中では判断材料になりません。
第76回の申込者数からも同じ動きが読めます。国税庁が公表した第76回の受験申込者数は簿記論26,001名(前年比104.8%)、財務諸表論20,428名(同93.4%)でした。財務諸表論だけが減っているのは、前年の合格率31.9%で合格者が多く出た反動と読めます。受験する集団は毎年こうして入れ替わります。
第76回から、全員に得点が通知される
国税審議会が令和8年8月21日付で公表した資料に、通知方法の変更が書かれています。これまでは、5科目合格者には合格証書、一部科目合格者には合格した旨のみを記載した結果通知書が届き、得点は知らされませんでした。得点が書かれていたのは、合格点に達しなかった科目がある人への通知だけです。
資料は、一部科目合格者等から得点通知を求める要望が高まっていることを踏まえ、受験者サービスの向上を図る観点から、第76回試験から5科目合格者と一部科目合格者にも得点を通知するとしています。これにより第76回以降は、全ての受験者に対して各受験科目の得点が通知されます。
受験生にとっての実質的な変化は、合格した科目の点数が初めて分かることです。ぎりぎりで通ったのか、余裕があったのかが数字で見えます。次の科目に進むときの時間配分を決める材料になりますし、複数科目を受けた人は科目ごとの仕上がり差も比べられます。同じ「合格率の実数で見る」やり方は日商簿記でもやっていて、簿記2級の合格率は下がっているのか。ネット試験5年分の実数で確かめるに置いてあります。今年に限っては、発表日に見る情報が去年までと違うという前提で待つことになります。
2級と同じなのは仕訳、違うのは時間の使い方
簿記論と簿記2級で同じなのは、仕訳を切る動作と、決算整理の考え方です。個別論点で言えば、貸倒引当金・減価償却・経過勘定・売上原価の振替は、扱う金額と条件が細かくなるだけで骨格が変わりません。ここは2級の蓄積がそのまま使えます。
別物なのは、時間の使い方です。ここは2級の訓練が向かない部分で、簿記論は2時間の試験なのに全部を解き切ることができない構成になっています。どの問題を捨てるかを試験中に決める作業が入るので、2級で身につけた「全問解く」動きのままだと、部分点を取り逃します。財務諸表論はさらに性格が違い、計算に加えて理論の記述があります。2級には対応する訓練がまったくない領域です。
この距離を時間で見るなら、2級の学習量そのものが参考になります。市販教材のページ数から積むと2級で359時間でした(簿記2級は何時間で受かるか|社会人がテキストのページ数から逆算する)。簿財はその数倍の投下が前提になる試験で、しかも1回で決まりません。
発表までの94日間にできること
発表予定日までは94日あります。
まず、次の科目の学習を始めることです。合格発表を待ってから動くと、次の試験まで9か月を切ります。簿財のどちらかが通っている前提で税法科目に入るか、両方落ちている前提でもう一周するかは、発表を待たずに決められます。判断を保留した3か月分の時間は戻ってきません。
次に、実務に何が残っているかの棚卸しです。簿財の学習で扱った論点は、そのまま経理実務の語彙になります。連結、税効果、リース、退職給付。これらを説明できる状態は、試験の結果とは別に手元に残ります。職務経歴書に書けるのは資格の名前ではなく、担当した工程と扱える論点のほうです。
もうひとつは、答案の再現です。今年から得点が通知されるので、自分の再現答案と実際の点数を照らし合わせられます。これまでは合格科目の点数が分からず、再現答案の精度を測る手段がありませんでした。11月27日以降、自分の採点感覚がどれだけずれていたかを初めて測れます。次の科目の時間配分を決めるうえで、この照合は使えます。
41歳以上の合格率は全体の半分程度になる
国税庁は年齢別の合格率も公表しています。令和7年度(第75回)は、20歳以下35.4%、21〜25歳29.4%、26〜30歳25.5%、31〜35歳24.8%、36〜40歳21.4%、41歳以上11.5%でした。全体は21.6%です。41歳以上は受験者11,632名に対して合格者1,339名で、全体の半分程度の合格率になります。
この数字を「年齢で不利」と読むのは早すぎます。可処分時間の差がそのまま出ている可能性が高く、年齢そのものの影響を切り分けたデータは公表されていません。ただし、自分がどの帯にいて、その帯の合格率がいくつかを知っておくことは、続けるかどうかの判断材料になります。
撤退を考えるときに整理したいのは、投下した時間が消えるかどうかです。消えません。簿財の学習で身につけた会計基準の読み方は、税理士になるかどうかと関係なく残ります。むしろ経理実務では、簿記2級の範囲を超えた論点を扱える人が少ないため、税法科目まで進まずに経理へ振り向けるという経路は現実的な選択肢です。求人票で何が見られるかは簿記2級で経理に転職できるか|合格者の実数と求人票の読み方にまとめました。
逆に、続けると決めたなら発表を待つ理由はありません。94日は次の科目のテキストを1周するには足りる長さです。撤退でも継続でも、11月27日まで何もしないという選択だけが、どちらにとっても損になります。
出典は国税庁「令和8年度(第76回)税理士試験公告」「令和8年度(第76回)税理士試験における試験結果の発表方法の変更について」(令和8年8月21日・国税審議会)、「令和8年度(第76回)税理士試験申込者数」、および令和6年度・令和7年度の試験結果表で、いずれも2026年8月25日に確認しています。