2027年度から適用される新しい出題区分表が、2026年7月31日に確定版として公表されました。紙の手形・小切手の廃止で手形の項目が丸ごと消え、その穴を埋めるかたちで2級の3論点が3級へ降りてきます。適用は2027年4月1日以降に施行する試験からで、統一試験・ネット試験・団体試験のすべてが対象。2026年度中(2027年3月31日まで)の試験は2022年度適用の区分表のままなので、いま持っている教材は年度末まで有効です。
いつから変わるのか
日本商工会議所は2025年12月25日に2027年度適用の出題区分表を暫定版として先行公表しており、2026年7月31日にこれが確定版になりました(同会議所の公表資料・2026年8月19日確認)。適用範囲は「2027年4月1日〜2028年3月31日の間に施行する」試験で、ペーパーによる統一試験方式・団体試験方式・ネット試験方式のいずれも同じ区分表に基づきます。ネット試験だけ先に切り替わる、といった方式ごとのずれはありません。
| 受験する時期 | 適用される出題区分表 |
|---|---|
| 2027年3月31日まで | 2022年度適用の区分表(2021年度に改定したもの) |
| 2027年4月1日以降 | 2027年度適用の区分表(2026年7月31日確定) |
教材の買い替えを考えるうえで効いてくるのはこの境目です。手元のテキストが2022年度版の区分表に対応していれば、2027年3月の試験までは範囲のずれが生じません。逆に、2027年4月以降に初回受験を置くなら、手形の章がまるごと載っている教材はその部分が空振りになります。
手形が消える — 3級と2級から一番大きく減る部分
改定の引き金は試験側の事情ではなく決済実務の側にあります。全国銀行協会が2025年3月に、2026年度末をもって電子交換所における手形・小切手の交換を廃止することを決定しました。これを受けて、新しい区分表では手形関連の規定がすべて削除されます。具体的には、現行区分表の「5.手形」と「6.債権の譲渡」という大項目が消え、「3.売掛金と買掛金」が「3.売掛金および買掛金ならびに電子記録債権等」に改められました。
受取手形・支払手形・手形貸付金・手形の裏書・割引・不渡り——3級の学習でもっとも仕訳を書かされてきた領域が、この一手で範囲外になります。代わって重みを増すのが電子記録債権・電子記録債務で、こちらは売掛金・買掛金と同じ範疇に配置されました。ただし出題内容そのものに変更はなく、営業取引以外から生じる営業外電子記録債権・営業外電子記録債務が区分表に明記された程度です。
注意しておきたいのは、電子記録債権が決済されなかった場合の処理は今回の改定では出題範囲に示されていない点です。従来の手形の不渡りに相当する論点ですが、実務上の事例に乏しく会計処理が固まっていないことを理由に見送られています。手形の不渡りの代替を先回りして覚える必要は、いまのところありません。
小切手が振り出されなくなることの余波として、当座預金の重要性が下がると資料自体が認めています。そのうえで「エ.」の項目に普通預金が追加され、当座預金より先に置かれました。当座預金が範囲から外れるわけではありません(電子記録債務の支払いで当座預金口座を求められることがあり、ペイオフの全額保護対象でもあるため)。
2級から3級へ降りてくる3論点
手形が抜けると3級の出題内容が減りすぎるため、2級の一部が3級へ移されます。移行するのは次の3つです。
| 移行する論点 | 現行 | 2027年度から | 3級での出題の程度 |
|---|---|---|---|
| 販売のつど売上原価勘定に振り替える方法(売上原価対立法) | 2級 | 3級 | 制限の記載なし |
| 有形固定資産の除却、廃棄 | 2級 | 3級 | 制限の記載なし |
| 減価償却の定率法 | 2級 | 3級(※付き) | 償却率を示すなど簡易な出題。200%定率法の保証率・改訂償却率は3級では出題しない |
売上原価対立法が3級に降りる理由は資料に明記されていて、3分法で決算まで売上原価をまったく把握しないのは企業経営の観点から健全とはいえず、実務でも販売のつど振り替える処理が増えている、という判断です。3級ですでに商品有高帳で先入先出法・移動平均法の受け払いを扱っている以上、総勘定元帳へ反映する方法まで学ぶのが自然だ、という筋道も示されています。
ここは3級を受ける人にとって素直な朗報ではありません。手形の仕訳は覚える量こそ多いものの、パターンが決まっていて得点源にしやすい領域でした。入れ替わりで入ってくる定率法と除却・廃棄は、いずれも決算整理と絡んで第3問で失点しやすい形です。定率法には簡易な出題にとどめる旨の但し書きが付いていますが、除却・廃棄と売上原価対立法には程度の限定がありません。「範囲が減るから3級は楽になる」とは読めない改定です。
リースは2級の骨組みが変わる
もう一つの柱が、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」への対応です。同基準は2027年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用で、借手側ではファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区分がなくなります。区分表もこれに合わせ、項目名から「取引」の文字が落ちて「リース」になり、2級からは「ファイナンス・」の語と「オペレーティング・リース取引の借手側の処理」が削除されました。
勘定科目の見え方が変わります。資料の仕訳例では、リース開始時に使用権資産とリース負債を計上し、決算時は使用権資産減価償却累計額へ振り替える形が示されています。2級が借手側の処理に限られる点、利子込み法と利子抜き法を双方出題する点、利息相当額の各期間への配分を定額法に限る点は従来どおりです。変わるのは区分の考え方と科目名で、計算の枠組みではありません。
2級には「短期リースおよび少額リースの取扱い」が新設されました。リース期間12か月以内で購入オプションを含まない短期リースと、重要性の乏しい少額リースは、オンバランスせず賃貸借処理が容認されます。仕訳では支払リース料勘定を使います。そして2級以上では、不動産の賃借について賃貸借処理をする場合も支払家賃・支払地代ではなく支払リース料に統一されます。3級では従来どおり支払家賃・支払地代のままなので、級をまたぐと同じ取引の科目名が変わることになります。
リースの識別・リース期間の決定・契約変更は2級では出題として明示されず、1級の範囲です。2級では所与のものとして扱われ、識別の判断を求められる出題にはなりません。1級ではこのほか、売掛債権譲渡に伴う買戻権・遡求義務の時価計上、サブリース取引、借地権の処理、株式引受権が明示されたほか、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」(2025年10月公表)に合わせて「中間財務諸表」が「期中財務諸表」へ改められています。
リースの項目を2級と1級の列に分けて並べ、勘定科目表からリース資産とリース債務が消えた点まで追った表は新リース会計基準は簿記2級にどこまで出るかにあります。
受験時期をどう置くか
判断の分かれ目は、2027年3月末までに合格し切れる見込みがあるかどうかです。手持ちの教材が2022年度版で、その期間内に受け切れるなら、範囲の変更は無関係になります。ネット試験は随時受験できるので、この線を使いやすいのはネット試験のほうです。方式ごとの合格率の実数差はネット試験と統一試験の比較に整理しています。
一方、学習開始が2026年の後半以降で、初回受験が2027年4月をまたぐ可能性があるなら、手形の章に時間を使うのは避けられます。ただし新区分表に対応したテキストが出そろうまでは、旧版で学びつつ手形を飛ばし、定率法と除却・廃棄を2級用の教材で補うという歪んだ形になります。この移行期の不便さは、範囲が減ることの利得と釣り合うとは限りません。
2級を目指している人にとっては、リースの科目名変更のほうが影響が大きい論点です。2級の合格率がどう推移してきたかは2級の合格率推移、3級から積むかどうかの判断材料は3級の合格率の実像にあります。当サイトが数値をどう扱っているかは運営者情報のとおりです。
出題区分表の改定内容・適用時期は日本商工会議所「2027年度適用の商工会議所簿記検定試験出題区分表等(確定版)について」および同資料の改定趣旨説明書で2026年8月19日に確認した公表内容です。