この記事の答え
2027年度の出題区分表で2級に置かれたリースは、借手側の処理と、短期リース・少額リースの取扱いです。リースの識別、リース期間の決定、契約変更、それに貸手側の処理は1級の列に入りました。利子込み法と利子抜き法は従来どおりなので、計算の手順そのものは動きません。2級で覚え直すのは勘定科目名と、区分の考え方だけです。
2級のリースは借手側の処理と短期・少額リースまで
この表の範囲
日本商工会議所が公表している2027年度適用の出題区分表(商業簿記・会計学)と、2022年度適用の同じ表から、リースの項目だけを級の列ごとに並べたものです。予備校の予想や改定前の解説は入れていません。
| リースの項目 | 2級 | 1級 |
|---|---|---|
| 借手側の処理 | 出る(利子込み法・利子抜き法。利息相当額の配分は定額法) | 出る(利息法・級数法まで) |
| 短期リース・少額リースの取扱い | 出る | 出る |
| 貸手側の処理 | 出ない | 出る(ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分あり) |
| セール・アンド・リースバック取引、サブリース取引 | 出ない | 出る |
| 借地権の処理 | 出ない | 出る |
区分表には、同じ項目でも級が上がれば程度も高くなるという注記が付いています。だから1級の欄が空いている行は「1級では出ない」ではなく「2級と同じ範囲まで」と読みます。逆に2級の欄が「出ない」の行は、2級の答案では問われません。3級の列にリースの項目はありません。リース以外に何が入れ替わるのかは2027年度からの出題範囲の変更点で扱っています。
項目名には※が付いています。区分表の注記では、※は本来なら上の級に属する範囲だが、その級では簡易な内容のものを出題する趣旨だと説明されています。2022年度版でも2級のリースは同じく※付きでした。深さの水準は据え置きです。
項目名そのものは「リース取引」から「リース」に変わりました。現行の企業会計基準第13号が「リース取引に関する会計基準」、2027年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用になる第34号が「リースに関する会計基準」で、基準名に合わせた変更です。
リース資産とリース債務は答案から消える
2022年度版の商業簿記標準・許容勘定科目表は、2級のA欄にリース資産とリース債務を置いていました。2027年度版のA欄にその2つはありません。代わりに使用権資産、使用権資産減価償却累計額、リース負債が並びます。支払リース料は両方の版に載っていて、ここだけが動きません。
消えた2つは、許容勘定科目のB欄にも残っていません。2027年度版の表全体を見ても、リース資産とリース債務は1か所も出てきません。勘定科目表はA欄が標準、B欄が採点上許容される科目だと説明されているので、表に無い科目はどちらでもないということになります。
借りている物件を資産として計上する発想は、2級に前からありました。ファイナンス・リースをオンバランスする処理がそれです。名前が入れ替わったのは、借手側でファイナンス・リースという区分そのものがなくなったからで、処理の中身が新しくなったわけではありません。
とはいえ、答案に書く文字が変わるという一点を私は軽く見ません。科目を指定せずに解答させる仕訳問題で、旧版の科目名を書いた答案がどう扱われるかは、区分表にも勘定科目表にも書かれていないからです。
利子込み法と利子抜き法はそのまま残る
改定の説明書は、2級では利子込み法と利子抜き法を双方とも出題すること、利子抜き法での利息相当額の各期間への配分は定額法に限ることを、いずれも従前のとおりだと書いています。利息法と級数法は1級の欄に残ったままです。留意を促しているのは使用される勘定科目のほうで、金額の出し方には触れていません。
説明書が挙げている仕訳例は、期首に営業用トラックを調達する形です。リース期間5年、リース料は年額800,000円の後払い、利息相当額400,000円を定額法で配分し、耐用年数5年・残存価額ゼロの定額法で間接法により減価償却する。開始時に計上するのはリース料の総額ではなく、そこから利息相当額を抜いた3,600,000円で、使用権資産3,600,000円とリース負債3,600,000円を両建てにします。支払時はリース負債720,000円と支払利息80,000円に割って現金預金800,000円を減らし、決算時は減価償却費720,000円を使用権資産減価償却累計額へ振り替えます。埋める金額の作り方は変わっていません。
旧版の教材でこの形の問題を解いた経験は、そのまま使えます。
区分がなくなったのは借手側だけ
借手側でファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がなくなった、というのは事実です。ただし貸手側では区分が残っています。説明書はそれを注意喚起のために出題区分表で明示したと述べており、1級の欄にも「ファイナンス・リース、オペレーティング・リース」が括弧書きで入っています。
「新基準で区分は廃止された」と一行で覚えると、1級の貸手側で詰まることになります。2級までで止めるなら気にしなくてよい話です。1級まで進む予定があるなら、区分の廃止は借手側に限った変更だと分けて覚えておいたほうがいい。
リースの識別、リース期間の決定、契約変更も1級側です。説明書は、2級ではこれらを所与のものとして扱い、解答にあたって識別の判断を要しない出題にすると明言しています。新基準で「これまでリースとされていなかったものがリースになる」という論点は、2級の答案には出てきません。
不動産の賃借は2級でも二通りある
短期リースと少額リースは、オンバランスせずに賃貸借処理でよい枠です。短期リースはリース期間が12カ月以内で購入オプションを含まないもの、少額リースは事業内容に照らして重要性が乏しく、契約1件あたりの金額にも重要性が乏しいものを指します(企業会計基準適用指針第33号の第20項・第22項)。事務所用スペースの家賃90,000円を現金で払う仕訳例では、借方は支払リース料です。
これを「不動産の賃借は賃貸借処理」と丸めると足をすくわれます。2級以上では不動産を賃借した場合に賃貸借処理と使用権資産として計上する方法の両方が出題対象になると、説明書はわざわざ断りを入れました。問題文が短期とも少額とも言っていない賃借なら、使用権資産を立てる側の処理も想定しておくことになります。
もう一つ絡むのが科目の統一です。2級以上では、賃貸借処理をする場合でも支払家賃勘定や支払地代勘定を使わず支払リース料勘定に統一されます。3級の範囲では引き続き支払家賃・支払地代で出題されるので、3級の教材で家賃の仕訳を練習した人は、2級の答案でその科目名を書き換えることになります。
2027年3月までに受け切れば旧範囲のまま
線は2027年4月1日です。同日から2028年3月31日までに施行される試験は、統一試験方式・団体試験方式・ネット試験方式のいずれも2027年度適用の区分表で出題されます。2027年3月31日までの試験は2022年度適用の区分表のままです。
リースを理由に旧範囲での受け切りを急ぐのはおすすめしません。削られるのはオペレーティング・リース取引の借手側の処理で、代わりに短期リース・少額リースの取扱いが入ります。量はほぼ入れ替わりで、新範囲のほうが軽いとも重いとも言えません。
判断が要るのは教材の側です。手元のテキストが2022年度版に対応していれば2027年3月の試験まで範囲のずれは出ませんが、リースの章は骨組みが変わるので、差分だけを足す形では追いつきません。改定をまたぐときの教材の扱いは改定を挟んだときのテキストの寿命に整理しました。
順序としては、受験日を先に置いてから範囲を考えるほうが迷いません。ネット試験は随時受験なので、2027年3月末までに何回受けるかを自分で設計できます。方式ごとの合格率の差はネット試験と統一試験の選び方で実数を並べています。当サイトが数値をどう扱っているかは運営者情報のとおりです。