市販テキストの実ページ数から積むと、簿記3級は148時間、2級は359時間、3級から通しなら507時間になります。平日1時間+土日3時間ずつ(週11時間)なら3級で14週、2級で33週です。数字より効くのは工業簿記を後回しにしない順序で、2級の学習量の4割弱は工業簿記側にあります。
3級148時間・2級359時間・3級から通しで507時間
市販の主要シリーズ(TAC出版「みんなが欲しかった」)の教科書と問題集の実ページ数を公式書誌から取り、消化速度を決めて時間に直しています。教科書は1時間あたり8ページ(読む+章末の例題を解く)、問題集は1周目が1時間あたり5ページ、2周目が10ページ。模擬試験は3級が60分×5回+同量の復習で10時間、2級が90分×5回+同量で15時間としました。講義動画は含めていません。速度には個人差が大きく、これは「量から逆算するとどのくらいか」を出すための目安です。
| 範囲 | ページ数 | 目安時間 | 週11時間なら |
|---|---|---|---|
| 3級 商業簿記 教科書 | 416 | 52時間 | — |
| 3級 商業簿記 問題集 | 288 | 86時間 | — |
| 3級 模擬試験と復習 | — | 10時間 | — |
| 3級 合計 | 704 | 148時間 | 14週 |
| 2級 商業簿記 教科書 | 636 | 80時間 | — |
| 2級 商業簿記 問題集 | 416 | 125時間 | — |
| 2級 工業簿記 教科書 | 388 | 48時間 | — |
| 2級 工業簿記 問題集 | 304 | 91時間 | — |
| 2級 模擬試験と復習 | — | 15時間 | — |
| 2級 合計 | 1,744 | 359時間 | 33週 |
| 3級から通しで2級まで | 2,448 | 507時間 | 47週 |
時間の取り方を変えると、同じ量でも期間が大きく動きます。平日30分だけの人と、平日1.5時間+土日4時間ずつの人では、2級で6倍以上の差が出ます。
| 時間の取り方 | 週あたり | 3級 | 2級 |
|---|---|---|---|
| 平日30分だけ | 2.5時間 | 60週(約14.0か月) | 144週(約33.5か月) |
| 平日1時間 | 5.0時間 | 30週(約7.0か月) | 72週(約16.7か月) |
| 平日1時間+土日3時間ずつ | 11.0時間 | 14週(約3.3か月) | 33週(約7.7か月) |
| 平日1.5時間+土日4時間ずつ | 15.5時間 | 10週(約2.3か月) | 24週(約5.6か月) |
この数字が通説より重く出るのは、問題集を2周する前提を入れているからです。教科書だけを1周する計算なら3級52時間、2級128時間まで下がりますが、それで受かるかは別の話になります。合格率が回によってどれくらい動くかは日商簿記2級のネット試験5年分の合格率に実数を並べてあります。
つまずく論点とその順番
時間の配分より先に決めるべきなのは順序です。2級で崩れる人の形はだいたい決まっていて、商業簿記を全部終えてから工業簿記に入り、そこで力尽きます。上の表で分かるとおり、2級の学習量1,744ページのうち692ページ、時間にして140時間が工業簿記側です。全体の4割弱を最後にまとめて残す形になるので、商業簿記の記憶が薄れる前に試験日が来ます。
工業簿記の入口でつまずくのは、勘定連絡図です。材料・労務費・経費が仕掛品へ流れ、製品を経て売上原価へ抜けるという1枚の図で、ここが頭に入っていないと個別原価計算も総合原価計算も部分的な暗記になります。逆に言えば、この図さえ描ければ工業簿記の前半は素直に進みます。教科書を読む前に勘定連絡図だけを先に写して覚えるのは、遠回りに見えて短い経路です。
商業簿記側で時間を吸うのは、第3問に出る決算整理と、連結会計です。決算整理は論点そのものより処理の順番で、貸倒引当金・減価償却・経過勘定・売上原価の振替をどの順で片付けるかが決まっていないと、精算表で数字が合いません。連結会計は開始仕訳の考え方が入るまで手が止まりますが、入ってしまえば毎回同じ形なので、ここは早めに時間を投下したほうが回収が早い箇所です。
3級では、手形の仕訳が長く得点源でした。ただし2027年度から出題区分表が変わり、手形は範囲から外れて2級から3論点が降りてきます。いま学習を始める人は、自分の受験日がその境目のどちら側かを先に確かめる必要があります。詳しくは2027年度の改定とテキストの買い替えの境目に整理しました。
社会人の時間割の組み方
この形の要点は、通勤の30分に仕訳だけを置くことです。仕訳は1問が数十秒で終わるので、電車が混んでいても中断しても損が出ません。教科書を通勤で読むと、乗り換えのたびに文脈が切れて同じページを読み直すことになります。金曜の夜を空けておくのも同じ理由で、予定どおり進んだ週は休み、遅れた週はここで取り戻します。
破綻しやすいのは、平日に2時間ずつ入れて土日を空ける形です。週10時間という総量は同じでも、平日夜の2時間は残業と飲み会で最も消えやすい枠で、消えた分を戻す場所がありません。もう1つ崩れやすいのが、土日にまとめて8時間を置く形です。1日で8時間の学習が続く人はほとんどおらず、実際には3時間ほどで集中が切れて、残りが自己嫌悪に変わります。
試験方式によっても組み方が変わります。ネット試験は随時受験できるので、仕上がった週に受けに行く形が取れます。統一試験は日程が決まっているため、逆算した固定の締切ができます。締切がないと動けない人は統一試験、仕上がり次第で動きたい人はネット試験が噛み合います。合格率の実数差はネット試験と統一試験の合格率の実数差で比べました。
テストセンター経由のネット試験は、予約できるのが申込日から3日目以降で、日付の変更もキャンセルも受験日の3日前で締まります。仕上がった週に受けに行く組み方をするなら、ネット試験の申込・変更・キャンセルの期限を先に確かめておくと日程を動かしやすくなります。
教材の最小構成
上の試算に使った構成そのものが最小構成です。3級は教科書1,210円+問題集1,210円で2,420円、2級は商業簿記の教科書と問題集が各1,650円、工業簿記も各1,650円で合計6,600円(いずれも税込)。3級から通しでも9,020円で揃います。
ここに足したくなるのが、予想問題集・過去問題集・仕訳アプリ・別シリーズのテキストです。買い足す前に確かめてほしいのは、いま持っている問題集を2周終えたかどうかだけです。2周終わっていない段階で別の本を買うと、1周目の途中が2冊に増えるだけで、消化ページ数は増えません。上の表で問題集が全体の時間の6割を占めているのは、そこが得点に直結するからです。
模擬試験の分は、教科書と問題集に付属する読者特典で足りることが多くあります。TAC出版のシリーズには模擬試験プログラムと仕訳Webアプリが付いていて、追加費用はかかりません。ただし特典の利用期限は改訂版が刊行された月末までなので、古い版を安く買う場合はこの部分が使えないと考えておくほうが確実です。
独学をやめた方がいい条件
調べても解決しない箇所が3か所を超えたとき
教科書の同じページで2回以上止まり、調べても解決しなかった箇所が3か所を超えたときが、その1つです。独学で詰まる箇所は人によって違うので、その3か所を人に聞ける環境の価値が、講座の費用を上回る局面があります。
週の予定が2週続けて崩れたとき
上の時間割は金曜を予備枠にして1週分の遅れを吸収する設計ですが、2週連続で崩れると取り戻せません。強制的な締切が外から来る形、つまり講義の日程がある学習に切り替えたほうが進みます。
受験日までの週数が、表の週数に足りないとき
受験日が先に決まっていて、上の表の週数が間に合わない場合です。週11時間で2級が33週なら8か月弱です。3か月後の試験を受けると決めているなら、週あたりの時間を増やすか、範囲の圧縮を外部に任せるかのどちらかになります。独学が向かない人がいるという話ではなく、量と時間の関係でそうなる、というだけの話です。
この3つに当てはまらないなら独学で問題ありません。9,020円の教材で507時間を積めば、3級から2級まで到達できる量です。まず自分の週あたりの可処分時間を数えて、上の表のどの行にいるかを確かめるところから始まります。
2級の先に税理士試験の簿記論・財務諸表論を置くなら、2級の359時間はその数倍を投下する試験の入口にあたります。2級と同じ部分と別物になる部分は簿記論・財務諸表論の本試験後にやることの中で分けています。
ページ数と価格は、TAC出版オンラインストアの公式書誌および公式ストアで2026年8月25日に確認しています。