経理の仕事は、経済産業省の経理・財務サービス スキルスタンダードで36業務に分けられています。未経験の職務経歴書で書けるのは「経理の経験」ではなく、この36のうちどれに、どの工程で接していたかです。営業事務でも【7】経費管理と【1】売掛債権管理の入口には触れていることが多く、そこを工程の名前で書き出すのが棚卸しになります。
経理の仕事は36業務に分かれている
経済産業省が2004年度に開発した経理・財務サービス スキルスタンダードは、経理・財務部門の仕事を機能別に整理したもので、業務ごとに業務マップ・業務プロセスマップ・スキルディクショナリの3点が公開されています。分け方は次の3群です。
経済産業省 経理・財務サービス スキルスタンダード本編の業務一覧(36業務)による。
経理業務18は、売掛債権管理・買掛債務管理・在庫管理・固定資産管理・ソフトウェア管理・原価管理・経費管理・月次業績管理・単体決算業務・連結決算業務・外部開示業務・中長期計画管理・年度予算管理・税効果計算業務・消費税申告業務・法人税申告業務・連結納税申告業務・税務調査対応です。財務業務11は現金出納管理から資産流動化業務まで、非定型業務7は企業買収・会社分割・解散清算・株式公開・株式発行増資・資本政策・ストックオプションが並びます。
公開されているファイルは36業務それぞれに3点ずつで、合計108ファイルあります。業務マップは最小が【29】資産流動化業務の20KB、最大が【10】連結決算業務の88KBで、工程の細かさが4倍以上開きます。連結決算のプロセスマップは265KBあり、単体決算業務の164KBより厚い。分量の差がそのまま工程数の差です。
この並びを見ると、「経理」と一語で呼ばれているものの内側が、入口の債権債務から決算・申告・開示まで幅を持っていることが分かります。求人票の「経理業務全般」という表現が指す範囲は会社ごとに違い、36のうち5つのこともあれば15のこともあります。
未経験でも接している業務は入口側に集まる
経理職の経験がなくても、他の職種で36のいずれかに接していることはよくあります。私が棚卸しの起点として見るのは、次の3つです。
- 【7】経費管理 — 出張精算や立替精算を自分で申請していたか、部門で取りまとめていたか。取りまとめ側なら、領収書の要件確認と差し戻しの判断をしています
- 【1】売掛債権管理 — 請求書の発行、入金の確認、督促の連絡。営業事務や受発注の担当者が持っていることが多い工程です
- 【19】現金出納管理 — 小口現金の管理と日々の残高照合。店舗や事業所の管理担当が持っています
資格が求人票でどう扱われるかは簿記2級で経理に転職できるかに置いています。接している、というのは工程の一部を回していたという意味で、業務全体を担当していたという意味ではありません。ここを混ぜて「売掛金管理を担当」と書くと、面接で消込と滞留管理まで聞かれて話が合わなくなります。書くのは自分が回していた工程の名前までです。
逆に、未経験の棚卸しに向かないのが【9】単体決算業務から先の群です。決算・申告・開示は担当が分かれていて、部門外の人が工程に入る機会がほとんどありません。ここが埋まらないのは普通のことなので、無理に近い経験を当てはめるより、埋まらないと分かったうえで応募先を選ぶほうが早く進みます。
簿記2級で埋まるのは知識であって業務経験ではない
スキルスタンダードは業務マップとスキルディクショナリを分けて公開しています。業務マップが工程の流れ、スキルディクショナリがその工程に必要な知識です。簿記の学習で埋まるのは後者だけです。
この区別は職務経歴書の書き分けに直結します。簿記2級の合格は資格欄に書く事実であって、職務経歴の欄に書ける工程ではありません。工業簿記の原価計算まで自分で解いていたとしても、それは【6】原価管理の知識側であって、標準原価の差異分析を月次で回した経験ではないからです。
合格までにかかる時間はテキストのページ数から逆算した学習時間に置いています。
スキルスタンダードで測れないものが2つある
この資料を棚卸しの目盛りにするとき、外れる部分をはっきりさせておきます。1つは制度対応で、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応は業務区分そのものに独立した枠がありません。区分表は工程の流れを整理したもので、その工程に後から乗った要件までは追っていないからです。
もう1つが規模で、業務の数で経験を測る読み方が向かない会社があります。36業務は、連結決算業務や連結納税申告業務が独立の枠として立っているとおり、担当が分かれている組織を前提にした粒度で切られています。一人経理の会社では【1】売掛債権管理から【9】単体決算業務までを同じ人が回すので、この目盛りで数えると「接している業務が多い」という結果になりますが、それは工程を深く回したことの証明に使えない数え方です。業務の数ではなく、どの工程を何回転させたかで書くことになります。
書けるのは工程の名前と頻度と量の3つ
棚卸しした工程を職務経歴書に落とすとき、1行に入れる要素は3つです。工程の名前、回していた頻度、扱っていた量。この3つがそろうと、読む側は自分の会社の同じ工程に当てはめて規模を測れます。
| 棚卸しの粒度 | 書き方 |
|---|---|
| 工程の名前 | 「請求書の発行と入金消込」「小口現金の日次残高照合」「経費精算の一次チェックと差し戻し」 |
| 頻度 | 「月次」「日次」「四半期」。締めの営業日数が言えるならそれも入る |
| 量 | 件数、拠点数、担当していた部門数。金額規模は会社が特定されうるので置き換える |
量を書くときに気をつけるのは、勤務先が特定できる規模と業種の組み合わせを避けることです。「年商◯億円のメーカーで」と書くと業界内では絞り込めてしまいます。件数と頻度だけなら、その人が回していた工程の大きさは伝わって、会社は特定されません。
棚卸しで落ちやすいのは差し戻しと締めの位置
棚卸しの取りこぼしで多いのは、判断が入っていた部分です。経費精算を取りまとめていた人は、申請を通すか差し戻すかを毎回判断しています。この判断は【7】経費管理の工程の一部ですが、「経費精算の取りまとめ」とだけ書くと消えます。差し戻しの基準を自分が持っていたなら、そこは書ける経験です。
2027年度からは簿記の出題範囲そのものが動くので、いつの区分表で学んだかも書き方に影響します。範囲の境目は2027年度の出題範囲の変更点にまとめました。
もう1つが締めのどこに立っていたかです。月次の締めで、自分の作業が締め日の前なのか後なのかで、担当していた工程の位置が変わります。前なら伝票の起票側、後なら残高の確認側です。この位置は職務経歴書の1行では見えないので、書くなら明示したほうが伝わります。
棚卸しの結果、36業務のうち接していたのが2つや3つでも、それ自体は不利になりません。未経験可と明記された求人が見ているのは、経理の工程を回した量ではなく、工程という単位で仕事を捉えられているかどうかです。3つを工程の名前と頻度と量で書けている人と、「経理業務全般に関心があります」と書いている人では、読む側にとって別の情報量になります。
棚卸しの範囲と書き方についての問い
経理の経験が1つもない場合、職務経歴書に何を書けばいいですか
36業務の分類に照らして、いま担当している仕事のどこが経理の工程に接しているかを書きます。請求書の発行、入金の確認、経費の精算、現金の残高照合はいずれも経理業務の入口にあたる工程です。接していないと分かった場合は、その事実を前提に未経験可の求人へ絞ることになります。
スキルスタンダードは2004年度のもので、今も使えますか
業務の区分と工程の流れを整理した資料なので、勘定科目や税率のように改正で動く部分は含まれていません。私は棚卸しの目盛りとして使い、個々の処理の内容は最新の基準で確かめる、という使い分けをしています。
財務業務や非定型業務は棚卸しの対象になりますか
財務業務11のうち【19】現金出納管理は未経験者でも接している場合があります。非定型業務7は企業買収や株式公開などで、担当する人が限られるため未経験の棚卸しではまず出てきません。出てこないことを問題として扱う必要はありません。
【記事情報】
・業務区分は経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」本編の業務一覧(経理業務18・財務業務11・非定型業務7の計36業務)により、2026年9月11日に確認しています。
・本記事は生成AIを用いて公開資料から構成しています。個別の応募先の要件は求人票と募集企業の案内をご確認ください。