この記事の答え
日本商工会議所が簿記2級について示しているのは、商業簿記と工業簿記(原価計算を含む)・5題以内・90分・70%以上の4項目だけです。第1問20点といった配点も、部分点の付け方も公表されていません。科目ごとの足切りを設けているのは1級だけで、2級と3級の合格基準欄は「70%以上」の1行で終わります。苦手科目の足切りを避ける設計は、2級では最初から必要ありません。
公表されているのは科目・出題数・時間・70%の4項目
この表の範囲
日本商工会議所「商工会議所の検定試験」の2級 試験科目・注意事項と、同じ構成の1級・3級のページに載っている項目だけを並べたものです。予備校の分析値や受験者の自己採点は入れていません。
| 級 | 試験科目 | 出題数・試験時間 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算 | 90分+90分(途中に休憩) | 70%以上。ただし、1科目ごとの得点は40%以上 |
| 2級 | 商業簿記・工業簿記(原価計算を含む) | 5題以内・90分 | 70%以上 |
| 3級 | 商業簿記 | 3題以内・60分 | 70%以上 |
2級の欄はこれで終わりです。大問ごとの配点も、仕訳1組あたり何点かも、白紙の答案と計算過程だけ合っている答案をどう扱うかも書かれていません。
問い合わせて埋める道も開いていません。簿記の各ページの下端には「試験問題の内容及び採点内容、採点基準・方法についてのご質問には、一切回答できません」という一文が置かれています。これは2級のページだけの注記ではなく、1級・3級・簿記のトップページにも同じ行があります。公表しない方針が級ごとの判断ではなく、検定全体の運用として敷かれている、ということです。
科目ごとの40%足切りは1級にしかない
表のなかで1級の合格基準欄だけが2段になっています。「70%以上」のあとに「ただし、1科目ごとの得点は40%以上」が続く。2級と3級にはこの但し書きがありません。
ここが実務的にいちばん効きます。「工業簿記で4割を割ったら総得点に関係なく落ちる」という話を前提に学習計画を組んでいる人がいますが、その但し書きは1級の欄にしか書かれていません。2級で公表されている条件のうえでは、工業簿記が沈んでも商業簿記で取り切れば70%に届きます。
ただし、それを狙う計画には別の穴があります。配点が非公表である以上、「商業簿記だけで70点」が成立する保証もないからです。2級は「5題以内」としか決まっておらず、商業簿記と工業簿記が何題ずつ出るかも固定されていません。一方に寄せた設計は、公表されていない条件に賭けることになります。
足切りを避ける設計と、総得点を積む設計は別物です。2級で組めるのは後者だけです。
自己採点の点数と公式の採点は別のもの
不合格だった人が「54点だった」「26点だった」と書いているのを見かけます。あの数字はほとんどが、予備校の解答速報に自分の答案を突き合わせた自己採点値です。採点内容と採点基準が公表されていない以上、部分点の扱いが公式の採点と一致しているかどうかは確かめようがありません。
私はこの種の得点報告を、自分の弱点を測る道具として使うのは勧めません。連結精算表を半分まで埋めて止まった答案が18点なのか6点なのかで、次に何を潰すかの判断は変わります。その分かれ目を決める情報が公表されていないので、自己採点値は「どの論点で手が止まったか」の記録として読むのが限界です。点数のほうを信じて配分を組み直すと、存在しない配点表に合わせて勉強することになります。
配点が分からなくても決まるものは決まっている
公表されていないのは配点と採点基準で、出題の範囲は別です。どの論点が試験に出るかは出題区分表で公開されていて、改定のたびに入れ替わります。2027年度からの3級・2級の出題範囲の変更点は改定内容が確定している部分をまとめてあります。
学習量から逆算する期間の見積もりも、配点とは無関係に決められます。市販テキストの実ページ数から積むやり方は簿記2級の必要時間をページ数から逆算した記事にまとめました。合格率が回ごとにどれくらい振れるかはネット試験5年分の合格率の推移で実数を並べています。
問題演習のあとに書き残すなら、点数ではなく「第3問の決算整理で貸倒引当金の洗替に15分かかった」「勘定連絡図を描き直さないと製造間接費の配賦差異が追えなかった」という形にしておくと、次の週の配分に使えます。
1級を受けるなら前提が入れ替わる
ここまでは2級の話です。1級は商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目に40%の足切りがかかるので、どれかを捨てる設計が成立しません。2級までの「総得点で帳尻を合わせる」やり方をそのまま持ち込むと、合計では70%を超えているのに1科目が4割を割って落ちる形になります。2級の受験段階でこの差を知っておくと、1級に進むかどうかの判断が早くなります。